人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

1970年の秋【3】

初の海外旅行【3】

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ヨーロッパ訪問10ヶ国+2国の記念スプーン

 写真は訪問各国の主要都市で購入した記念スプーンである。

自分用の土産として又初の海外旅行の記念品として各国でスプーンを購入していくことを計画し実行した。価格が手ごろで嵩張らず長持ちし整理もし易く、それでいてそれぞれにお国の特色を持つ記念スプーンに魅力を感じ、移動の度に買い続けて行った。

帰国後に訪問国順に並べて額装したので旅行の思い出を辿る道しるべとなっている。

50年間同じ部屋、同じ場所で対面していてもが飽きることがなく、次第にアンティーク化してくるスプーンに愛着を感じている。

全部で15本であるが、これが430本までに広がった私の海外スプーン・コレクションの出発点となったのも思えば奇縁と云うべきか。

中央の金色の一本はこの旅行の思い出を象徴するベルリンのスプーンである。

時計回りに1時の位置からスタートして訪問国(都市)を移動するように配置した。

最初はアメリカのアンカレッジである。アメリカは訪問国ではないが当時日本からヨーロッパへの渡航はアラスカのアンカレッジ経由で、給油着陸地であった。

羽田から6時間ぐらいかかったと思うが、初めての外国となったのがアンカレッジであった。空港のターミナル・ビルで時間つぶしをしただけで大地を踏んだ訳ではないので正式な訪問ではないが、それでもターミナル・ビルの窓から眺めたアラスカの森や雪山の風景は目に焼き付いており、いよいよ日本を離れて外国への旅が始まったという実感が体に伝わったのを覚えている。

売店にスプーンが並んでいるのを見つけ、何はともあれ計画第1号として購入した。

海外での初めての購入である。価格は3ドル、1ドル360円であったから1080円の買い物であった。

2本目(2時の位置)のスプーンはデンマークの首都コペンハーゲンである。ここも正式訪問地ではなく、日本航空からスカンジナビア航空への乗り換え地であった。

ところが羽田出発の際、他便ではあるが初登場の日航ジャンボ機の小事故が滑走路で発生し、我々の搭乗機が1時間遅れで離陸した。この遅れがコペンハーゲンの乗り継ぎに影響し、SUSの接続便は既に離陸していた。次便は2時間後である。

日航コペンハーゲン事務所が謝罪のしるしに早朝ではあるがタクシーを3台チャーターし市内観光のサービスを提供してくれた。今では一寸考えられないが事故遅延が齎した思わぬ観光旅行であった。

3本目が初めての公式訪問国スウェーデンのスプーンである。ストックホルムの観光名所ガムラスタンの土産物店での購入で小型であるが格好の良いスプーンである。

4本目(3時の位置)は次の公式訪問国ベルギーで、首都ブリュッセルで購入した。

5本目がイギリスで購入場所はロンドン塔のすぐ横にあった土産物店であった。

首都ロンドンは滞在期間が5日間と旅行中一番長く公式訪問のほかにもいろいろ経験しヨーロッパ文化の核心部に近付いた感を抱く事が多かった。

6本目(5時の位置)が花の都パリのスプーンである。こちらも公式訪問国であったが観光も楽しみ、博物館を訪れ、シャンゼリゼ通りの美麗な景観に魅せられた。

続いて訪問したのが西ドイツである。7本目(5時半の位置)がディユッセルドルフである。西ドイツは今回の旅行では滞在期間が1週間と一番長く各地を移動した。

8本目(6時半の位置)がベルリン(西側アメリカ地区)のスプーンである。公式日程にはないが是非訪れたいと団員一同切望し、特に東ベルリンに地下鉄と徒歩で入国見学したのは生涯でも得難い体験で感慨深い思い出である。

9本目(7時の位置)がフランクフルトで公式訪問の街であった。ドイツは第二次大戦は日本と同盟国であり、共に敗戦した国であるだけに親近感があり、会議中でも気心が通じ合う国民性を痛感し心温まる思いを抱くこと出来たと思っている。

10本目(8時の位置)がオーストリアのスプーンである。ウィーンのアンティーク店で購入した逸品で音楽の都の思い出が詰まっている。

11本目(9時の位置)はスイスのスプーンである。旅行中の疲れを癒す目的で設定した観光地訪問で美しい自然の風景を満喫した。スプーンはジュネーブレマン湖畔にある土産物店で購入した。

次の12本目はイタリアのスプーンである。公式訪問国であったが会議は小規模で懇親会に近く、4日間滞在の殆どを古都ローマの観光・歴史探訪に費やした。

13本目(10時の位置)は中東の国イスラエルのスプーンである。

公式訪問ながら第3次中東戦争が終わって間もない時期のため訪問が危ぶまれ、道中のウィーンで最終決定した入国であった。パレスチナ問題が深刻な事態に立ち至っていた中での訪問で生々しい戦場の跡も見ることになったが、ユダヤ人の建国理念も理解する中で新興国の姿を直視した。以来50年を経てイスラエルは力を蓄積し強力に変貌しており、訪問当時に話をした人々の純真な熱い想いが蘇ってくる。

スプーンはエルサレムの「嘆きの壁」の前の売店で購入した。

最後の14本目(11時の位置)は香港のスプーンである。長途の訪問を終了するに際して休養を目的に香港に立ち寄った。西洋から東洋に戻るために体調を整えながら香港の風情を楽しんだ。ヨーロッパのようなスプーン文化は存在しないが、中華食には不可欠な小道具で大小各種存在する。その中から今回のコレクションに合いそうな一本を見付けて旅行記念とし、締め括ることにした。

以上訪問順に紹介した各国・各都市のスプーンが初の海外旅行の記念となっている。