人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

1970年の秋【6】


初の海外旅行【6】

ヨーロッパ大陸 飛び入り第一歩 デンマークの首都・コペンハーゲン

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  デンマーク コペンハーゲンのスプーン

 北極上空を通過した後、ようやく仮眠が取れたところで明るくなってきた窓外を眺めると眼下は一面の雲海で、端から黄金色の光線が差し込み眩しいような太陽が現れた。

 飛行機はスカンジナビア半島の北端を南下中でヨーロッパ大陸はもう目の前に近付いていた。北極圏上空ではかなりの揺れを感じ、初めての体験で不安の夜を過ごしたが、一夜明けたら安定飛行に入り雲が晴れると海岸線が眼下に現れ、次第に高度が下がるとスカンジナビア半島の大地も視野に入って来た。バルト海であろうか海峡を過ぎると緑の平原が続きやがて格子縞のように仕切られた奇麗な畑地が一面に広がると着陸寸前の時を迎えていた。

 

   

10月11日・日曜日・午前7時30分頃に第2の中継地コペンハーゲンの空港に着陸した。ヨーロッパ大陸の玄関口到着であるが、第一番の感想は空港の広さであった。滑走路や誘導路は勿論であるが巨大なターミナル機能と通路の長さにびっくりしながらビル内を移動した。本来はここで1時間の接続乗り換えが計画されていたが、我々の搭乗機が羽田空港での日航ジャンボ機事故の影響で1時間遅れで離陸したため予定した接続機は10分前に既に飛び立っていた。

 次便までの待ち時間は2時間半である。さてどうなるのかと思っていたらコペンハーゲン空港駐在の日航職員が出て来て遅延を謝罪し、出発時間までの間、市内観光をサービスしたい旨の申し出があり、喜んで受け入れた。日航提供のタクシーに職員が案内役として同乗しコペンハーゲン市内に繰り出した。

 ヨーロッパ入り本番を前にしての思わぬ飛び入り観光の出現であった。コペンハーゲンは歴史と文化豊かなデンマークの首都であり、偶々今回の訪問国から外れていたが観光的には垂涎の場所である。第二次大戦でも破壊を免れており伝統ある宮殿・王宮や教会はじめ市内には著名な観光名所が多く点在する。当日は偶々日曜日で早朝という時間帯であったため商店街は殆ど店開きしていなかったが、王宮の衛兵交代などは貸し切り状態で見物し、人魚像にも足を運んで時間つぶしの観光を堪能した。

 空港への帰り道にやっと一軒だけ開店していた土産物屋を見付けて立ち寄り、仲間全員が目当ての北欧商品出現に眠気を覚めさせられた。

 店内にはお土産名産品に混じって大小雑多なポルノ商品が所狭しと陳列されていた。当時日本ではご禁制の品々で、フリーセックスと称された北欧の国々での開放状況は巷の噂以上に日本人男性にとっては好奇の的となっていた。

 土産は何にもいらないがポルノだけこっそり手に入れて来てくれと先輩に強要されて日本を出発した経緯もあり、ヨーロッパ大陸到着早々に現れた絶好のチャンスを逃すまじと決断し各種購入した。

 仲間の皆さんも目の色変えて物色中である。帰国時の空港税関検査が厳しいのは承知のうえであるが目の前に見るカラフルでズバリなポルノ雑誌を見ると日本で帰りを待っている同志の喜びの顔が瞼に浮かび、何とかなるとの思いが先に立ったのを思い出す。

 今一つ、私には大事な買い物があった。冒頭に掲出したスプーンである。

やや小型のステンレス製で匙部は形の良い卵型をしており、頭部飾りにデンマークの国土地図がはめ込まれた観光お土産スプーンである。

 価格はデンマーク・クローネの表示があったが手持ちの米ドルで2.5ドルを支払った。アンカレッジのスプーンとほぼ同価格であり、以後各国で購入していく予算に目途がついた2本目であった。