人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

1970年の秋

初の海外旅行【48】帰国・香港から羽田空港・日本帰着

  1970年11月15日(日)いよいよ日本へ帰国する日がやって来た。

 先月10月10日(土)に羽田空港を飛び立ち、訪問した国と地域は12ヶ国、ユーラシア大陸を時計反対廻りに一周する36日間の大旅行を無事成し遂げていよいよ今夜懐かしの日本に帰着する。

 午前中ゆっくりと支度して、13時30分に再び日本航空JL734便のDC-8機に搭乗して香港啓徳空港を飛び立った。

 下の写真は離陸直後に窓から眺めた香港の街と湾内の風景である。

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 11月15日(日)13時半過ぎ、香港より日本へ
 香港空港では免税品売店で洋酒3本と煙草2カートンを購入した。洋酒はカミュのブランディ・ナポレオンで1本は自分用であるが2本は上司へのお土産で、この頃の海外旅行での必買品であった。煙草も同様で自分では喫わないもののお礼挨拶の際の当座のお土産として、これまた必需品で銘柄が珍重された。

 帰国挨拶の順番等を考慮しつつ、家族への土産も確認しつつ、およそ4時間のフライトで日本上空に到達したが、羽田に近付き高度を下げるにつれて天候が悪くなり強い風雨が機外に押し寄せた。飛行機も揺れ出し着陸態勢に入る頃はしっかりベルトを締め付け主翼の揺れに恐怖を感じながら祈る気持ちで待機した。

   豪雨がたたきつける滑走路が直下に迫り、豪然と制動しながら着陸に成功したと直感した時、緊迫した静寂が乗客全員の拍手で破られて機内は歓喜と称賛に一変した。
 ゆっくりと進む滑走路から窓越しに見えた羽田空港ビルのネオンサインが雨に靄る中、日本に無事帰って来たという実感が体全体を包み込み、待ち受ける家族の顔が脳裏に浮かんできた。

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到着ロビーで待つ家族と出迎えの友人    11月15日(日)午後7時ころ帰国 

 会社・労働組合双方から大勢の方々が新幹線で上京し羽田空港国際線到着ロビーで家族と一緒に出迎えて下さった。上はその時のスナップ写真である。右肩に免税の洋酒と煙草を入れたショルダーを懸け、右手にベートーベンの交響曲全集レコードとパリ・モンマルトルで手配した土産用絵画2枚を下げ、左手のスーツケースには各地で整えた土産や会議資料が詰め込まれていたが、それのも増して訪れたヨーロッパ諸国で見聞と体験を積んで来た自分が人生の新しい扉の前に立っている事を痛感した。

  1970年(昭和45年)秋、人生初のヨーロッパ旅行が無事終了した。