人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

帆船大好き

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見る船・乗る船・作る船〔17〕

作る船〔7〕HMSヴィクトリー(その4)

             製作期間1987年9月1日~1989年7月6日

外板張り

 木造帆船模型作成行程中の最難関で最重要な作業が外板張りである。

船体整形の基本であるばかりでなく如何に実船のイメージを再現し且外観を美しく仕上げるかという帆船模型の生命線が其処に横たわっている。

 張り方は下張りのように簡単には進まないが、逆に下張りのお陰でラインのガイドが分かりやすく丁寧に慎重に計算的に進めて行けば先が見えてくる。

 実船と違い一本の外板材をできるだけ長く使って通し張りとする。そのための曲線作りは下張りで経験しているが、表面に傷を付けないように慎重さが必要である。

 張り付け作業場のポイントは山ほどあるが最大の難関は船腹の幅と直結する外板幅の調整と接続と切れ目の処理方法である。当初は外板幅を細くするよう計算もしたが私の技量では無理と分かり、途中から勘頼りに転向した。言葉を換えればその場処理の我流である。

 作業は下張りの上に基準ラインを引き船首部に整形固定して船尾部に流し張りを行い、そこから順次上方下方に張り合わせていくが、3次元の船腹曲線にマッチングは不可能で途中で細い三角の隙間が空いてくる。実船や玄人モデラーであれば前回公開の(3)Anatomy ob  NELSON’SHIPの図の如くの埋め込み形式で処理するが私の倍は外板材の先端切込みで整形するといういわばごまかしの作業で切り抜けた。

      

 ヴィクトリー号の外板張り作業、船首部キールに外板材を細くして固定接着しシーアラインに添って船尾部に向かって接着を繰り返す。下張り外板にはあらかじめ砲門となる位置に穴があけてあり、外板張り途中で位置を確認しながら作業する。

      

 帆船模型ヴィクトリー号の船体部外板張り作業完了。この後キールと船尾部の作業が残っている。全体行程の中ではまだ前半入り口であるがここまで出来ると何となく先行きが見えてきて楽しみも増してくる。

 下はAnatomy ob  NELSON’SHIPの船体が完成した時の外板張りの様子である。船首部、船尾部の曲線イメージが想像以上に鮮やかである。



 

 

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見る船・乗る船・作る船〔17〕

 作る船〔7〕HMSヴィクトリー(その3)

              製作期間1987年9月1日~1989年7月6日

 外板下張り

 船体作りは外板張りが主体で全行程の中でも最重要な作業である。外板張りの出来具合で作品の価値が決まってしまうほどの大切な作業で緻密な計算と辛抱強い作業管理が必要である。外洋航海に耐える船体構造の基になるのがフレームに張り付けていく外板で、波に強く水漏れしないための船体にするために実船では長さや板の継ぎ目部分に細かい工夫が施されている。模型製作では本物通りには行かないまでも理論に叶い、出来るだけ実船に近いイメージが保てるように心がけて作業に当たっている。

 外板は実船でも模型でも二重張りであり、まず下張りから始めて形を整え、次に外張り移る。模型の下張り外板材は柔らかい材質で曲げやすいが、それでも失敗を繰り返しながら船体の曲線に合わせて張り合わせていく。

 最初に船体中腹ラインで基準になる外板材一本を左右舷側に張りわたし、そこから船腹上下に張り足していくのが外板張りである。キットに入っている下張り外板材は巾5ミリ・長さ60センチほどの細い板材であるが、船腹の上下幅に合わせた調整を施した後に下張り外板材を一本ずつ船体曲線に合わせて熱加工で曲げ、先に整形したフレームに接着又は釘打ちをして張り足していく。

 曲げ作業が難しく失敗を繰り返すが、ここで諦めて止めてしまったらモデラーは失格である。それこそ棒を折ってしまったらおしまいで帆船は出来上がらない。

       

 下張り外板材の幅調整を(これが難しい)をした後、一本一本に熱処理でカーブを付けたあと船首部分に接着しながらフレームに釘で仮打ちし張り合わせていく。

       

    外板下張りが終了したヴィクトリー号模型の船体部

 

         Anatomy ob  NELSON’SHIPの外側解説図

               

 実船だは上図の中央部のように幅を調整した板を張り合わせていきますが、キット模型では一本の通し材で全体調整しながら張っていくのが精一杯です。

 船体外側面が3次元であるため張り合わせにも高度な技術が必要です。

                                 以下次号

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見る船・乗る船・作る船〔17〕

 作る船〔7〕HMSヴィクトリー(その2)

                                    製作期間 1987年9月1日~1989年7月6日

船体フレーム整形

  Anatomy obThe NEISON'S SHIPの図面は製作への信念を固めるための御札のような存在で、実際の模型製作はコーレル社キット附属の簡易図面である。外形図から作業手順を解説した区分図目が全部で15枚以上あったが写真に残したものは僅かである。

 簡易図面と云っても素人が理解するのは難しく、細かい作業の手順を頭に入れ込まないと籔の中に入り混むような難物である。

 まず最初は工作するための船台を作り、キットの指示に従ってキールにフレームをはめ込み外形を作り上げていく。

        

        

        

        

全体の形状、縦横高さ、フレームの左右間隔、ゆがみ、などを入念にチェックして接着剤で固定する。

先ず作業第一段階の区切りである。

        
 

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見る船・乗る船・作る船〔17〕

作る船〔7〕HMSヴィクトリー(その1)

                製作期間1987年9月1日~1989年7月6日

     

           完成時のヴィクトリー号

構想 帆船模型愛好者にとってヴィクトリー号への製作挑戦は憧れの極みである。

 七つの海を制覇したイングランド海軍の旗艦で名将ネルソン提督が座乗し戦死を遂げ海戦史上不滅の歴史に魅せられるとともに船の持つ美しさ、華麗さ、豪華さ、重量感は正に威風堂々として製作意欲を呼び起こす。

 製作には高度な技術を必要とする熟練者向きの船であるが、キットを利用すれば中級者でも挑戦可能であるとこから我々帆船仲間も多くの人が手掛けている。

 イギリス南部のポーツマス港に実船は保存係留されていることもあって、細部にこだわり精密な模型に挑戦するベテランモデラーもあり、見事な作品の展示に魅せられた事も屡々であるが、自らの力量と持ち年齢を考えてキットに頼ることに決め、各メーカーのカタログや写真を見較べてポピュラーではあるが作り易いコーレル社のキットを購入した。値段は中級向けとは云え65000円でこれまででは最も高額であった。

 キットには図面が15枚程付いており手順の解説もあるが、矢張原船へのこだわりは捨てきれず、イギリスで発行されているヴィクトリー号模型製作専用の解説書 The Anatomy  ob・NELSON'SHIPS(ネルソン提督座乗艦の解剖書・第8判1981年版)を手に入れて勉強するとともに、原船のイメージを体に浸み込ませるためにポーツマス港を訪れて実船の体験乗船に挑戦した。

 

                   

 

図面と実船体験で製作イメージをじっくっりと練った。






 



 

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見る船・乗る船・作る船〔16〕

作る船〔6〕ハーフムーン(コーレル社・1/50)1989・10~1990・3

        ブルー・シャドウ(マモリ社・1/64)1990・4・30~9・13  

          

          ハーフムーン 17世紀のイギリス軍艦

          

         ブルー・シャドウ 18世紀のアメリカ軍艦

          上の2隻は帆船模型初期の作品である。

共に二人の娘の嫁ぎ先実家への贈呈を目的に作成した。製作技術はまだ未熟であったが丁寧に地道に作成しほぼ満足のいく出来栄えであった。

ザ・ロープの同好会にも出展し、初心者ながら見劣りのしない作品であった自信を強めた記憶が残っている。

      この頃から作業の記録を残すことにしたので併せて掲出する。

              

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   2022/6/19

 





 

 

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見る船・乗る船・作る船〔15〕

見る船〔10〕戦艦ヴィクトリー号

イングランドポーツマス軍港     1988年(昭和63年)6月3日

 ネルソン提督座乘のイングランド海軍戦艦ヴィクトリー号は帆船模型製作者にとっては憧れの存在である。模型製作に挑戦することは勿論であるが、それと同等に現地に保存係留されている実船の見学乗船は夢の領域である。

 帆船模型製作に熱中し始めて少し自信が固まり始めた1988年(昭和63年)の春ロンドンとパリを訪れた最大の目的はヴィクトリー号の見学訪問であった。

 ロンドンのテムズ河畔にあるホテルで一泊した翌日、ウオータールー駅から列車で約1時間強のポーツマス港を訪れ念願のヴィクトリー号と対面した。

 感激の一瞬で胸が高まったが、目の前のヴィクトリー号を見て〝よし!きっとこの船の模型製作に挑戦するぞ!〟と覚悟を決めて乗艦し艦内の要所要所を隈なく見学した。 

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      上の絵葉書はポーツマス軍港の売店で購入した。

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 艦首とバウスプリットは修理中でカバリングされていて見れず残念であったが、艦尾楼の豪華さ美しさには度肝を抜かされた。艦尾からの舷側砲列も勇壮でトラファルガルの海戦の模様が頭に浮かんできた。

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 天空に聳えるマスト・ヤードと交錯するロープの情景は私の最も好きな光景である。

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  憧れのヴィクトリー号見学乗艦を果たし、家内と一緒に写した記念写真である。