1970年の秋【16】
初の海外旅行【16】イギリス訪問(4)ロンドン観光
衛兵の交替・バッキンガム宮殿に向かって行進する衛兵の行列
大英帝国の首都ロンドンには伝統に彩られた史跡や観光名所がふんだんに存在する。
その中で一番華やかで人気抜群なのがバッキンガム宮殿の衛兵の交替である。到着2日目18日の午前10時にホテルを出発し地下鉄経由でバッキンガム宮殿に到着した。定刻の1時間前ぐらいから宮殿前には観光客が集まりはじめ場所取りも始まっていた。
鉄柵で仕切られた宮殿中庭に非番となる衛兵が並びだし上官の点呼や訓示が始まり出すと時を移さず北東のセント・ジェームス宮殿の方角から着飾った鼓笛隊の先導で数百人の衛兵が大行列で近付いてきた。先頭集団はホルンやトランペットを奏でつつ、後続部隊は整然と歩調をとって門前に聳えるクィーン・ヴィクトリア・メモリアル像のサークルを迂回しながらバッキンガム宮殿の中庭に到着し非番組との交代儀式が粛々と進行した。当日は天気も良く騎馬警官の警備の中、約6000人の観光客が伝統ある衛兵交代風景に堪能した。
午後からもロンドン市内の歴史的な観光ポイント巡りに専念したが、衛兵の交代とは対照的なロンドン娘たちの現代的な姿にも遭遇し、時代の変化を目の当たりにした。
ロンドン塔前のテムズ河畔に現れた超ミニスカートの娘たち
日本でもミニスカートは出始めていたがロンドンで現れた彼女たちは膝上20センチ以上でスマートな脚線美をこれ見よがしに闊歩していた。我々が訪れた時期は10月も下旬に差し掛かる頃で気温も低かった。団員一同も防寒対策には気を使って出国したが、若手の1人がコートなしに耐え切れずロンドン到着早々にデパートに走り込みコートを買い込んだほどの季節環境の中で好天とは云え超ミニでの川岸散歩には少々驚いた。
ロンドンは人種もさまざまであるが、ファッションも色とりどりで雑然とした感じを持ったのは当時のイギリス社会の風潮の表れでもあったと思っている。
写真にはロンドン・ブリッジが写っているが反対側の岸辺に建つロンドン塔の見学ではイングランド王室の血なまぐさい歴史の断面を勉強させらされた。もともとは城砦であるが何時しか牢獄に変じた事情がこの間の歴史を物語っている。
観光旅行ではないがロンドン滞在で見逃してならないのが大英博物館である。
ロンドン塔の後に足を延ばし時間の許す範囲見学した。巨大な建物で膨大な収蔵品を前にして唯呆然としたがエジプト展示室だけはかなり丁寧に見学できたと喜んでいる。
大英博物館の建物正面風景(10月18日・日曜日)
大英博物館エジプト展示室の裸のミイラ
エジプト展示室の収蔵品の多さに驚いた。ピラミッドや周辺の墓場から発掘された数多くの箱棺に収まったミイラが所狭しと展示されていた。1965年(昭和40年)に日本でツタンカーメン展が開催され見に行った(京都であったと記憶しているが)時の感激が忘れられないが、同じようなミイラが一ヶ所に集められていて真近で見ることが出来、4000年前のエジプト文化を通じて人類の歴史と文明の発達に思いを馳せられた。
上の写真は展示室で強烈な印象を受けた裸のミイラで、魂が宿っているような思いに満たされたのを思い出す。
ロンドンは見学する場所が多すぎて公式訪問の合間ではとても回り切れないが、我が博学のコーディネータ先生のお陰で必見場所は訪れた。
その一つがナショナル・ギャラリーであった。トラファルガー広場に面して建つクラシックなギャラリーはヨーロッパ絵画専門館で古典派から印象派までの大画家の名作が揃っていた。憧れていたレオナルド・ダ・ヴィンチの【岩窟の聖母】をはじめとしてミケランジェロ、ボッティチェリ、ラファエロ、ルーベンスらルネサンスの傑作やモネ、ゴッホ、セザンヌら印象派巨匠の作品など数は少ないが名画が並べられており、最後の部屋に飾られていたレンブラントのオランダ絵画やゴヤのスペイン絵画などの暗い雰囲気が今でも頭に蘇ってくる。
今一つ、ヨーロッパを理解するのに不可欠な要素がキリスト教である。
イギリスはカトリックでもなくプロテスタントでもなくイギリス国教の国であるが、宗教の理念は同根で各所に歴史的な教会が威容を誇っていた。
お昼休みの時間を利用してウエストミンスター寺院とセントポール寺院を訪ね、王室や国民と宗教との繋がりについても垣間見てロンドン観光を終了した。