人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

1970年の秋【19】

初の海外旅行【19】フランス(2)パリ観光その1

f:id:karisato88:20201023161221j:plain
f:id:karisato88:20201023161156j:plain
コンコルド広場とノートルダム大聖堂屋上からセーヌ川を望む

 10月23日金曜日、パリ2日目、午前中はフリータイムでO氏と近くの名所探訪にで出掛けた。ホテルを出てセーヌ川方向に向かうとすぐに大きな広場が現われた。トラック競技場のように中央に自動車路があり、その中心に巨大なオベリスクが建つコンコルド広場であった。少し歩をすすめて真ん中の位置まで来ると広場を抜けて真っ直ぐの大通りが遥か彼方まで続き、その先頭に凱旋門がこちらを見下ろすように聳え立っていた。
 パリの象徴として知られるシャンゼリゼ通りが目の前に展開していた。

 世界に冠たるフランスの栄光とは正にこの景観の事かと圧倒される気分に襲われた。
 嘗てヨーロッパを二分して支配した英仏両国の首都を訪れて、都市景観に大きな違いがあるのに気が付いた。伝統の積み重ねと富の集中を思わせるロンドンの街並みに較べるとパリには広大で計画的で華麗な都市空間が存在した。裏道に入れば汚れや傷みも目立つが、大通りの美しさと建物の配置には景観との整合性が考えられており、訪れる人にパリのイメージを植え付けていた。

 パリ中心部には緑地帯が多く設けられており市民の憩いの場所となっている。
 コンコルド広場からチュイルリー庭園に続く緑地帯を抜けカルーセル凱旋門を見てからルーブル美術館に到着した。フランスを訪れたら何が何でも訪れて見たいと思っていた世界最大の美術館である。広大な館内を詳しく見て回る余裕はないが目ぼしいところを見逃さない事と、どうしても見たい作品を探したいの両方で心は焦っていた。

 

 

 最初に入ったのが古代オリエント館ですぐ高い壇上に展示されていたサモトラケのニケ像が眼に飛び込んできた。エーゲ海サモトラケ島で発掘されたギリシャ彫刻の傑作で頭部が見付かっていないが翼をを両肩から広げた勝利の女神像は古美術愛好家にとっては垂涎の大理石像である。ルーブル美術館に来たなという実感を覚えつつ歩を進めると次の展示室中央にはミロのヴィーナスが端然と周囲を圧するように展示されていた。

f:id:karisato88:20201023160651j:plain
f:id:karisato88:20201023161021j:plain
f:id:karisato88:20201023161045j:plain
ミロのヴィーナスとモナ・リザと絵画展示室

 ミロのヴィーナスはルーブル美術館の至宝で過去に一度だけ海外に持ち出されている。1964年4月から東京上野の国立西洋美術館で展示され、続いて京都でも展示会が開催された。日本中の美術ファンが殺到した超人気の展示会で私も手ぐすね引いたが何故か行きそびれ残念に思っていた。

 今回はチャンス到来で長蛇の列に並ぶこともなく殆ど独り占めの状態でゆっくり鑑賞出来た事を喜んだ。古代オリエント館には他にも大理石の彫刻類をはじめとして数えきれない程の遺品・美術品が所狭しと並べられていたが急ぎ足で通り過ぎ、絵画の展示室に入り、難なくモナ・リザの前に到着した。

 真ん中に掲出した写真のように当時は絵が壁に普通に掛けられており、警備員はおらず、画家が模写するのも許されており、そのままの光景が写真に収まっている。

 モナ・リザも日本展示会で見逃していたので間近かでの鑑賞に満足した後、ダヴィッドの「皇帝ナポレオン一世と皇后ジョセフィーヌ戴冠式」の巨大さに驚嘆し、足早に移動してルーベンスの連作絵画に目を見張り、クールベドラクロワの迫力も感じながら、ヨーロッパ絵画の伝統に圧倒されていた。
 ところで私にはルーブル美術館に行ったら是非鑑賞したいと思っていた作品が残っていた。

 ミケランジェロの「瀕死の奴隷」と「反抗する奴隷」の彫刻である。
 係員に聴くと西館に展示されているというので大急ぎで館内を突っ走り目当ての部屋に到着した。下の写真は現在の展示風景であるので当時とは雰囲気が異なるような気がしているが、ともあれ憧れの作品を前にして念願のミケランジェロを見ることが出来たという充実感に浸された。

f:id:karisato88:20201026180145j:plain

ミケランジェロ作 瀕死の奴隷(右)・反抗する奴隷(左)

 午前中にもう一ヶ所見学する所を予定して来た。O氏と二人でセーヌ河沿いを急ぎ足で歩き、シテ島に渡りノートルダム大聖堂前の広場に到着した。

 ファサードの彫刻に目を奪われた後に内陣に入り、ステンドグラスの僅かな灯りが差し込む祭壇のキリスト像に敬虔な気持ちを抱かされてしばし瞑目した。

 退出時に出口の隅に設けられている階段に気が付いた。螺旋状に屋上まで続いており登段自由であったので二人でトライした。あとで聞いたら全部で387段であったが、登りきるとテラスがあり、眼下にはセーヌ川が流れ、正面にはエッフェル塔が聳えており、パリの風景が一望出来るビュウポイントとなっていた。先客の女性が1人いただけでO氏と二人でパリの街並みを満喫した。

 文頭右側の写真がノートルダム大聖堂の屋上テラスから写したセーヌ川とポン・ヌフ周辺の風景である。