人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

1970年の秋・・

初の海外旅行【33】オーストリア訪問(1) ウィーン到着編 

 1970年11月1日(日)午前11時30分、オーストリア航空OS402便は高度を下げ、ベルト着用のアナウンスの下に滑走路に向かって降下した。機体が大地に接する瞬間を車輪の衝撃で感じ取り、急制動の成功に強張った身体が解けかけた一瞬後に機内に柔らかな音楽が流れ出た。曲はヨハンシュトラウス作曲の皇帝円舞曲である。流石にウィーンであると感じ入る中、序奏メロディがゆっくりとキャビン全体に行き渡り、機体の徐行に合わせて次第に主部に高揚しワルツのテンポに合わせるようにタラップに到着にした。

 魅惑の都市ウィーンに到着した。音楽の都ウィーンならではの演出で心にゆとりを感じながら6番目の公式訪問国オーストリアに入国した。

  例によって空港の銀行で通貨を両替した。オーストリアの通貨はシリングと補助通貨グロッシェンで1シリング13円85銭であった。旅も半分以上過ぎ手持ちの資金も少なくなりつつあったが、ウィーンでは特別の支出に備えて多額の両替を行った。ウィーン国立歌劇場クラシック音楽愛好者にとって垂涎の場所である。今回の旅行で3泊することが決まっていたので是非機会をとらえて観劇したいと準備を重ねてきた。偶然であったがロンドンでオーケストラの演奏会を聴くことが出来て喜んだが、本場ウィーンではもっと充実した音楽鑑賞を期待した。

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オーストリア補助通貨(50グロッシェン=7円)とウィーンのスプーン(銀製で高価)

 右上写真のスプーンは滞在3日目の11月3日に市内中心部のアンティーク店で購入した。各国各都市で買い続けているが、このスプーンお土産品というよりアンティークに近く銀製で品質的にはこれまででは最高級品である。少し小形で派出ないが頭部飾りの双頭の鷲はハプスブルグ家の紋章で正にウィーンを象徴するスプーンである。

 ウィーンでの宿舎はウィーン南駅に面したホテル・プリンツ・オイゲンで市内中心部から少し離れていたがベルベデーレ宮殿のすぐ側に位置した閑静な場所であった。ベルベデーレ宮殿プリンツ・オイゲン公の夏の離宮であるが、ナポレオン失脚後のウィーン会議で華やかな饗宴の舞台となった宮殿としても有名で世界にその名を馳せていた。

 到着の翌日早朝に早起きして散歩がてらに訪れ前庭から入り込み人気のない宮殿を一巡りしたのが懐かしいが、その時に写した写真が残っていたので下に一緒に掲示した。

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左・ウィーン南駅、中・ホテル周辺外景(中央付近)、右・ベルデベーレ宮殿