人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

帆船大好き

帆船大好き

見る船、乗る船、作る船

〔3〕サンタ・マリア号  (作る船1号・1986年4月24日完成)

 木製帆船模型に興味を覚え模型店のショー・ウインドウを眺め込み、参考の製作手引きを買い込んで準備を進め、意を決してサンタ・マリア号の模型キットを購入した。イタリアのアマテイ社製の初級者向けキットで値段は2万8千円であった。

 定年後における趣味の確立を本命とした決断であったが、モチベーションとしては先ず結婚する娘の門出への祝いとして自作の船を贈りたいと念じて制作に挑戦した。

 サンタ・マリア号を選んだのは初心者向きの易しい船であった事にもよるが、コロンブスが新大陸を発見した船であることから、人生の新生活を迎える娘夫婦への贈り物として相応しいと考えたのが本音であった。

 製作は全くの手探りで参考書と組み立て設計図の説明書きと簡単な工作道具を頼りに悪戦苦闘の上船体を作り上げ、塗装を施し、木材からマストやヤードを削り出して整形し、ロープ張りに挑戦して船の形が出来上がっていった。作業が進む度の感動と興奮を覚えながらも失敗の連続で、外板張りに使う細い木材の曲げ作業には何度も手こずって素材が無くなってしまい模型店に補充買いに行ったのを覚えている。初心者にとってこのあたりが一番難しい所で、ここで棒を折って諦めてしまう人も多いと聞いている。

 それでも持ち応え、先に進むことが出来たのは何としても娘夫婦の結婚式の贈り物を完成させたいという親の一念が後押しした結果であり、以後帆船模型製作愛好者に仲間入り出来たのも、この時の経験が心身に染み付いた結果であったと思い返している。

 帆船模型の多くはその名の通り風を受けた帆を広げている。最終段階の工程に属するが、ここでも見事に失敗した。サンタ・マリア号は初期大航海時代の船であるため帆装は簡単で大小4枚の横帆と一枚の三角縦帆(ミズン)から成っている。それぞれ帆布を印刷生地から切り出し、周囲をミシン整形した後にメインセール(主帆)とフォア・セイル(前帆)に十字架マークを染め込んで終了する。十字架マークは輪郭されていて、ろうけつ染で色付けするように指示されている。

 蠟と赤い染料を買って来て試し染めを行いろうけつ染の何たるかを理解したものの1枚目のメインセイルで失敗した。蠟固めがしっかりしていなかったため染料が染み出し輪郭がぼけて哀れな十字架模様が現われた。2枚目のフォアセイルは奇麗に染め上がったあもののメインマストが失敗したのが誠に残念であった。

 それでもサンタ・マリア号は航海には影響しない。そんな気持ちで予定日までに作り上げ新婚の娘夫婦と、続いて婚約中の次女カップルを招いて進水贈呈パーティーを自宅で盛大に挙行した。

         下はその時の写真である。

      f:id:karisato88:20210507160925j:plain

       完成して暫く自宅に飾ってあったサンタ・マリア号

      f:id:karisato88:20210507160858j:plain

 これが私の木製帆船模型製作の第1号であり、以後20年間にわたる帆船とのお付き合いの原点となった。