人生の軌跡・流郷松三郎の残思録

米寿に想う我が人生

1970年の秋【10】

初の海外旅行【10】ストックホルム滞在(2)

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    1970年10月14日 スウェーデン労働総同盟・会議風景

 ストックホルム滞在中に公式会議が2回開催された。

 10月13日(火曜日)にスウェーデン自然環境保護庁での環境汚染に関する会議を皮切りに、今回我々の訪問目的である公害問題視察団の活動が始まった。

 上の写真は翌10月14日(水曜日)に行われたスウェーデン労働総同盟(LO)との会議風景である。

 1970年当時、日本では水俣病患者の病状が顕在化しテレビで報道されて社会的な問題に発展していた他、富山のイタイイタイ病も原因追及の気運が高まり、また四日市の煙害も周辺住民に被害が広がり企業に対する責任追及の声が激しくなっていた時代であった。

 

 

ただ公害という概念や言葉の定義は明確でなく、public-pollutionの訳語として官庁関係で使われ出したもののまだ一般化しておらず、経済成長優先の中で国民的な関心事までには至っていない時代であった。

 日本では遅まきながら翌1971年に環境庁が発足したが、先進的な欧米諸国では既に自然環境保護に対する取り組みが国家レベルで進められており、政府、経済界、労働組合を含めて一般国民の関心が非常に高かった。

 我々のミッションもそんな中での派遣であったが、当時環境政策先進国といわれたスウェーデンを先ず訪れてみて、地球環境保護保全に対する意識の高さを痛感するとともに、日本に発生しつつある公害病の調査・研究がスウェーデンにおいて詳細に進められていることに驚きと肩身の狭さを思い知らされた。

 水俣病イタイイタイ病も薬物公害であり、四日市公害は亜硫酸ガスによる大気汚染であるが、人間が作り出す環境汚染は新たな原子力による放射能汚染をはじめ、海洋汚染、水質汚染、土壌汚染、自然破壊など多岐に亘る事を教えられた滞在であった。

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   10月13日(火曜日)スウェーデン自然環境保護庁訪問記念写真

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         ストックホルム郊外の美しい自然の景色