1970年の秋
初の海外旅行【38】スイス訪問(3)ジュネーヴ・買い物編
1970年11月5日(木)午前中にILO訪問を済ませ午後からはフリーである。
ジュネーヴのホテル到着早々に時計店セールスマン招待のシヨン城観光を受けた見返りで、市内の時計店へ団員打ち揃って訪れた。場所はモンブラン橋を渡った旧市街に近い位置であったと記憶している。
ヨーロッパ視察旅行参加が決まった時、自分の土産として予ねて念願であったオメガの腕時計購入を目指してそれなりの資金を用意して来た。買うなら当然スイスであるからセールスマンの勧誘は現地事情に疎い旅行者にとっては渡りに舟であったとと思っている。時計店の店構えも品揃えも店員の応対も正常で信用のおける店と判断したので団員一同思い思いに品定めに専念している様子が伺えた。
当時私はセイコーのゴールド・フェザーという中級の腕時計を長年身に付けていたので出来ればそれ以上のグレードの機種入手を狙っていたが高級と云われるロレックスなどは高根の花であった。そこでポピュラーであるか品質評価の高いオメガに狙いを定めて購入したのが下の写真のオメガ・デヴィルであった。
日本にはまだない中級の新機種で値段も予算範囲内で購入したが、帰国後に調子が悪くなり百貨店の時計売り場に見せたら、本国のスイス送りとなり、凡そ2ヶ月後に手元に戻ってきた。気候条件が合わなかったといとうのが不調の原因で調整したと説明されたが、その後は全く故障せず、40年間使い続けた後にリューズが摩耗して遂にリタイアした。
時計も50年経過すればアンティークとして通用すると云われているので、専門家に修理してもらえばそれなりの価値が出るのではないかと思っている。
時計店での買い物を済ませた後は解散となり個々に旧市内などの散策を楽しんだ。
オメガ・デヴィルが予算を下回り少し余裕が出たのであと一つ買いたいものが浮上してひとりでレコード店に赴いた。今回のヨーロッパ訪問で望外のクラシック音楽体験をさせてもらったが、欲を言えばオペラが主体で本場ドイツでオーケストラの演奏会を聴きたいと願っていた。ロンドンでバイエルン放送管弦楽団の演奏を聞いているが、ベルリンがウィーンでも超一流のオーケストラが聴けたら最高だと密かに思っていた。残念ながらその機会は無かったが、今年はベートーベン生誕200年の年でもあり、せめてヨーロッパを去るに際して記念になるレコードを購入したいという気持ちが強くなっていた。
レコード店には日本とは較べものにならないほど多種類のクラシックレコードが並べられており選択に迷ったが、自分でもまだ揃えていないベートーベンの交響曲全集に的を絞り込み店員と相談しながら白羽の矢を立てたのがカラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団演奏の新録音盤セットであった。
下に8枚入りのケースとレコードを掲載した。
初めての交響曲全集版の購入で充実した気分を味わったが、重量と嵩張りから手荷物となり、既にパリで購入していたモンマルトルの絵2枚と共に持ち帰りには苦労した。
日本帰国の1970年11月から今年2021年1月までの50年間、時ある毎に聴き続けており、ヨーロッパ初旅行のの回想とベートーベンへの想いを重ね合わせて人生の来し方を偲んでいる。